あと303日!【権利関係14:抵当権】
本日は
「権利関係」
の
「抵当権
について
勉強します。
<まずは過去問!>
Aは、A所有の甲土地にBから借り入れた3,000万円の担保として抵当権を設定した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aが甲土地に抵当権を設定した当時、甲土地上にA所有の建物があり、当該建物をAがCに売却した後、Bの抵当権が実行されてDが甲土地を競落した場合、DはCに対して、甲土地の明渡しを求めることはできない。
- 甲土地上の建物が火災によって焼失してしまったが、当該建物に火災保険が付されていた場合、Bは、甲土地の抵当権に基づき、この火災保険契約に基づく損害保険金を請求することができる。
- AがEから500万円を借り入れ、これを担保するために甲土地にEを抵当権者とする第2順位の抵当権を設定した場合、BとEが抵当権の順位を変更することに合意すれば、Aの同意がなくても、甲土地の抵当権の順位を変更することができる。
- Bの抵当権設定後、Aが第三者であるFに甲土地を売却した場合、FはBに対して、民法第383条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができる。
正解:2
権利関係は大っ嫌いです。
<解説>
1:正しい⭕️
土地と土地上の建物が
同一の所有者だったにも関わらず、
土地又は建物に設定された
抵当権の実行によって、
所有者が別々になると、
土地上に建物を所有する権限が失われます。
建物を取り壊すのはもったいないので、
このような場合、建物について、
地上権が設定されたものとみなします。
これを法定地上権といいます。
土地上に建物を保有し続けることができます。
建物のある土地について
抵当権を設定した後に
建物を第三者に譲渡し、
その後に土地が競売されていますが、
この場合も、法定地上権が発生します。
Dは、Cに対して、
甲土地の明渡しを求めることはできません。
2:誤り❌
Bは甲土地に対して
抵当権を有しているに過ぎず、
甲土地上の建物について何らの権利を有していません。
甲土地上の建物が焼失して
火災保険に基づく損害保険金が
発生したとしても、
Bは損害保険金を請求することができません。
※甲土地上の建物に
抵当権を設定した場合であれば、
抵当権者は、建物焼失時の火災保険金に対して、
抵当権を行使することができます。
これを物上代位といいます。
3:正しい⭕️
抵当権の順位は、
抵当権者の合意によって
変更することができます。
ただし、利害関係者がいるときは、
その承諾を得る必要があります。
ここでいう利害関係者とは、
順位の変更により自らの地位に影響を受ける者、
たとえば、転抵当権者のことをいいます。
債務者や抵当権設定者は、
利害関係者に該当しません。
Aの同意がなくても、
抵当権の順位を変更することが可能です。
4:正しい⭕️
Fは、抵当権付きの土地を購入した人、
抵当不動産の第三取得者です。
したがって、抵当権消滅請求をすることができます。
抵当権消滅請求は、
まず第三取得者(F)が
抵当権者(B)に対し、
民法383条所定の書類を
送付することで始まります。
<もっと詳しく>
『 抵当権とは? 』
抵当権とは、
「担保物権」の一種で、
分かりやすい簡単な例が、
お金を貸した時に
不動産等で保証してもらうことです。
たとえば、
BがAにお金を貸しました。
このことにより、
債権者Bは「Aに対する貸金債権」を有します。
貸したはいいけど、
お金が返ってこなかったら債権者Bは困りますよね!?
この貸金債権を保証(担保)するために、
債権者Bは、A所有の建物に抵当権を設定してもらいます。
そうすることで、
もしAが返済できなかったとしても、
Bが抵当権を実行して(競売にかけて)、
競売代金から返してもらう(優先弁済を受ける)
ことができます。
『 抵当権を設定できるものは? 』
抵当権の設定できるもの(対象物)は、
不動産、地上権、永小作権です。
これらを抵当権の目的物といいます。
※土地の賃借権には抵当権を設定できません。
『 抵当権の成立要件 』
抵当権者と抵当権設定者の
抵当権設定契約によって成立します。
成立は契約によるので、
質権とともに約定担保物権です。
抵当権者は債務者である必要はなく、
第三者でも抵当権を設定できます。
『 対抗要件 』
抵当権は登記をすることで
対抗力を備えます。
抵当権の順位は登記の前後(先後)によります。
一番初めに登記された抵当権を
「1番抵当権」、
そのあとに登記された抵当権を
「2番抵当権」という風に呼びます。
『 効力 』
抵当権の効力は大きく分けて下記3つに及びます。
- 土地と建物
抵当権を設定した土地や建物について
抵当権の効力が生じます。
もし、土地付き建物があって、
建物だけに抵当権を設定した場合、
建物だけに抵当権が及び、
土地には抵当権の効力は及びません。
逆も同じです。
- 付加一体物(付合物・従物)
付加一体物とは、
抵当権を設定した不動産にくっついている物を指し、
細かく分けると「付合物」と「従物」に分けられます。
付合物とは、
たとえば、建物の増築部分や土地上の
取り外しの困難な庭石を指します。
付合物については、
抵当権設定前後に関わらず、
抵当権の効力が及びます。
一方、従物(従たる権利)については、
抵当権設定当時に存在したものに限って、
抵当権の効力が生じるとされています。
たとえば、建具や畳、取り外しのできる庭石等、
土地賃借権もです。
ガソリンスタンドの店舗建物に
抵当権を設定した場合、
地下タンクや洗車機については、
「従物」として抵当権設定当時に
存在していれば抵当権の効力が生じると
判例ではいっています。
果実とは、抵当権を設定した物から生じる収益をいい、
天然果実とは、
たとえば、農地に抵当権を設定した場合、
その農地で収穫される農作物を指します。
法定果実とは、
たとえば、賃貸用マンションの「賃料」や
土地の「地代」、貸付金の「利息」などです。
法定果実については、
払い渡し前に差し押さえることで
抵当権の効力が生じます。
『 被担保債権の範囲 』
抵当権の被担保債権は、
金銭債権です。
抵当権で保証してもらう大元の債権です。
お金を貸したはいいけど返済されないと困るので、
抵当権を設定してもらうわけです。
この場合の貸金債権が被担保債権です。
そして、「被担保債権の範囲」とは、
貸したお金(元本)はもちろん、
利息、遅延損害金や違約金など
元本に付随(ふずい)するものも含まれます。
ただし、後順位抵当権者などの
利害関係人が存在する場合、
利息や遅延損害金については
最後の2年分に限られます。
『 譲渡 』
たとえば、抵当権者Aが、
抵当権を設定していない無担保の
債権者Bに抵当権を譲渡することを言います。
この場合、Aの配当額の範囲内で
Bが優先弁済を受けることができます。
『 放棄 』
たとえば、抵当権者Aが、
抵当権を設定していない無担保の
債権者Bに抵当権を放棄することで、
AとBが同順位となり、
Aの配当額の範囲内で、
AとBの債権額の割合でそれぞれが
優先弁済を受けることができます。
『 順位譲渡 』
たとえば、抵当権者Aが、
後順位抵当権者Bに抵当権を
譲渡することを言います。
この場合、AとBの配当の合計額の
範囲内でBが優先弁済を受けることができます
『 順位放棄 』
たとえば、抵当権者Aが、
後順位抵当権者Bに抵当権を放棄することで、
AとBの配当の合計額の範囲内で、
AとBの債権額の割合で
それぞれが優先弁済を受けることができます。
<まとめ>
今回は非常に難しい項目です。
得点しやすい項目
理解してればそれとなく取りやすいです。
得点しにくい項目
毎年出題されるにも関わらず、問題が難しく、勉強してもなかなか得点できないところです。捨て問としている場合も多いです。
捨ててもいい問題かも
だす。